栴檀東京句会













栴檀東京句会

HP管理者:田中

入選句 履歴


第85回 栴檀東京句会(平成30年3月24日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 縫ひかけのキルトも春の景色かな    富子

            (老化)

特選 地 おひなさまワタシフケマカシラン  左痴

     故郷の友より便り水温む        ひとみ

     五人囃子なかのふたりが笑ひをり    光枝

     裏山より狸下りくる遅日かな      光枝

     お食い初めしたる子の頬春兆し     ひとみ

     朝戸出の風より水の温きかな      明子

     太きこゑあげて一羽や残る鴨      光枝

     過労死が若者さらう冬最中       左痴

     野遊びの子らの花輪の首飾り      千恵子

     春の闇ホスピス棟の自動ドア      賀子

     五平餅焦げたる匂ひ水温む       修治

     水温むダックスフンドの引きづる尾   光枝

     散歩道赤子の笑顔水温む        豊三

     水温む犬に引かれて行く散歩      貴代美



第82回 栴檀東京句会(平成30年1月13日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  銀杏散つて道路工事の始まりぬ     富子

     太陽に向ける手のひら冬至かな     千恵子

     懐手信号青に変はるまで        賀子

     波音の聞こゆるところ冬芒       伸子

     青空へ桜冬の芽ほの紅し        貴代美

     南天の赤きに句座の弾みけり      千恵子

     冬木の芽枝の先より夜の明くる     貴代美

     昔日の大路まつすぐ冬の風       千恵子

     年の瀬の足袋忘れたる庭師かな     晋也

     寒星降る物干し台の我が宇宙      賀子

     子の頭より大きな冬至南瓜かな     賀子

     一人見る冬至の月の細さかな      富子



第79回 栴檀東京句会(平成29年11月11日土曜日)


       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  梨熟るる香の入り来る新居かな     ひとみ

特 選  顔寄せて袋を解く今年米        修治

特 選  運ばれ来ランプのゆらぎと菊膾     賀子

     台風過葉の渦巻きて吹き溜り      千恵子

     ワイパーに木枯らしの跡枝絡む     豊三

     団栗をポケットに入れ句の授業     晋也

     新米の湯気の香れる厨かな       明子

     さやけしや昨日の句みな反故となす   賀子

     友からの温き手土産今年米       ひとみ

     今年米と言ひて微笑む米屋かな     明子

     音たてて風は破蓮吹きわたる      貴代美

     敷物の柄見せ合ふ子秋の昼       晋也

     無人の家金銀木犀零れをり       千恵子



武蔵国分寺跡 吟行句会(平成29年11月12日日曜日)


特 選  湧き水に浸し大根売られをり      貴代美

特 選  冬の蜘蛛糸緩やかに掛けにけり     晋也

特 選  さねかづら尼僧の住みしこのあたり   光枝

     小さき柚子リースに組まれ門飾り    千恵子

     円陣を組む少年ら冬木立        豊三

     朝日浴びどうだんもみぢ透ける道    豊三

     冬草を踏んで天平伽藍跡        光枝

     天平の礎石に坐して小春かな      修治

     秋天や鵯の一声薬師堂         修治

     水澄むや武蔵国に国分寺        光枝

     冬芒揺れて稜線くつきりと       伸子

     大欅ひこばえもいま紅葉づれる

     仁王像睨める寺に鵯鳴けり       貴代美



第76回 栴檀東京句会(平成29年9月9日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  新盆の白提灯の闇に浮く        明子

     盆灯籠浦山の闇迫りくる        光枝

     一匹の蝉の揺るがす大樹かな      貴代美

     盆休み明けの警備の足攣りぬ      うが

     七夕に結ふ復興の文字太き       光枝

     あゝ短命なオクラの花が咲きにけり   修治

     雨雲の淡くなりける盆の朝       ひとみ

     台風一過先端まで晴れスカイツリー   富子

     残暑かなべたべた赤き閻魔寺      晋也

     群れなして観音前を秋あかね      貴代美

     遠まはりしておしろいの咲く時刻    左痴



第74回 栴檀東京句会(平成29年7月22日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 用も無く時々開ける冷蔵庫       伸子

特選 地 そうめんの竹を流れる白さかな     榮八郎

     冷蔵庫開くればたまご二つのみ     うが

     旗揺れて間口の狭き氷店        伸子

     水打つをよけて子規の庵まで      貴代美



第72回 栴檀東京句会(平成29年6月24日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 万緑やもう火を入れぬ登り窯      光枝

特選 地 青あらし熊野古道へ分け入りぬ     光枝

     薫風や婆ゆつくりと腰伸ばす      ひとみ

     西郷像丈の短き袷かな         晋也

     葱坊主の天麩羅てふおすそわけ     賀子

     青嵐レースのハンカチ奪ひ去る     左痴

     三途にも厠あるらむ鵜飼舟       晋也

     窓も戸も開かぬ隣家籔からし      伸子

     櫂握る黒き拳や青嵐          ひとみ

     払ひけり三角点に夏落葉        賀子

     祭髪きりり浅草行きのバス       貴代美

     辞世句に墨継ぎの跡青葉風       光枝



第70回 栴檀東京句会(平成29年4月22日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫

 

     うららけし指先で繰る電子地図     貴代美

     猫の恋醒めて己が身を舐むる      光枝

     朝市の婆の手厚し蓬餅         ひとみ

     春眠の人に肩貸す一両車        賀子

     春闘の帰り掻込むライスカレー     晋也

     ピエロ放るコイン消えたり春の雲    賀子

     ほほざしの腹の欠けたる酒膳かな    ひとみ

     花祭餃子食べ合ふ仲となり       晋也

     花菜風通過列車に手を振つて      光枝

     稚児よりも親のせはしき花祭      榮八郎

     子等の声高く弾けて花祭        ひとみ

     春愁の眉引き直しゐたりけり      光枝

     蘖の重なる岩の割れ目より       富子

     風光る車夫の真白き歯を見せて     晋也



第69回 栴檀東京句会 (平成29年3月11日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫

 

特選 天 猫の背に少しつもりぬ春の雪      光枝

特選 地 春の雨夕闇濡らし上がりけり      奈保美

     霜柱立てりと妻の背の丸し       修治

     蕾傾ぐ水栽培のヒヤシンス       明子

     花辛夷ひらりと風に乗るごとし     光枝

     開き初むころか山蘆の花辛夷      光枝

     綾子師と「こぶしの花」を唱ひしこと  明子

     鳥曇禅寺へ行かふかと思ふ       伸子

     ショーウィンドウ春のブラウス胸張って 富子

     雨水かな指先の荒れしづまりぬ     明子

     巫女たちの揺るる黒髪梅の花      貴代美

     春の雨買うたばかりの傘をさす     伸子

     春燈や朝まで消すを忘れをり      うが

     秩父嶺を背にして重き牛蒡引く     修治

     はじめてのトーシューズ履く春の色   賀子

     針先に模様生るる春灯         富子

     グランドへ光まつすぐ春立てり     奈保美

     有明の春満月や旅に出づ        賀子



第68回 栴檀東京句会 (平成29年2月25日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫

 

     猫の目の時に光らせ日向ぼこ      晋也

     独り夜の寄鍋の湯気広がりぬ      ひとみ

     使はれぬ箱階段に冬日射す       修治

     シャンプーの匂ひ夫から春一番     富子

     初御籤銜へ煙草のまま読めり      晋也

     春一番川面に鴨の片寄りぬ       光枝

     蓬莱といふ名の古木梅咲けり      貴代美

     滝音のとほくありけり梅探る      光枝

     大寒の雀黙してゐたりけり       奈保美

     マスクからはみ出す笑顔中学生     富子

     小刻みにはなびら震へ寒牡丹      光枝

     探梅や思はぬ方に抜けし路地      栄子

     売地札さつと飛びたつ寒雀       伸子

     指先の冷たさを知る独り旅       ひとみ

     寒鯉のぬらりとしたる水面かな     晋也

     白菊といふ名の椿無縁塚        栄子



第67回 栴檀東京句会(平成29年1月12日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 冬の雨夜警の顔面打ちつづけ      うが

特選 地 座らむとハンカチ広ぐ冬菫       光枝

     バス待ちぬ冬の菫を覗きては      貴代美

     〜仙台城址〜

     馬上より見据えてゐたる冬の海     光枝

     黄落や動かぬ雲と動く雲        伸子

     長湯して句を授かりぬ冬至風呂     千恵子

     黒猫の大きなあくびシクラメン     貴代美

     小春日や鼻緒の赤い下駄を買ふ     修治

     小春日や鴨の立てゐる水の音      奈保美

     落葉手の幼子走る母のもと       千恵子

     暮れてより冬至湯の柚子採りに出る   明子

     聖堂に灯すらふそく冬薔薇       光枝

     冬夜缶コーヒーで暖をとり       うが

     網の目のやうな冬木の影を踏む     ひとみ



第66回 栴檀東京句会(平成28年12月17日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     裏山のしばらくの名は紅葉山      栄子

     初霜や古き擬宝珠を手で触れむ     ひとみ

     咲き満ちて山茶花の窓となりしかな   富子

     南天の色づき測る鳥と人        左痴

     鯛焼や尻尾重きをえらびをり      賀子

     雑踏を高々とゆく大熊手        光枝

     糸切れし凧のごとくや冬の鳶      貴代美

     煮凝りを解しぶつぶつ独り言      修治

     白足袋の親指長き家系かな       栄子

     雪降るか降らぬか闇の迫りくる     左痴

     方言で聴く伝説や小春空        富子

     模試会場乾いた咳の二つ三つ      ひとみ

     小春日や経絡辿る鍼灸師        豊三

     初霜の今年伐りたる木株かな      栄子

     


第65回 栴檀東京句会(平成28年11月12日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 運動会ギブス取れたる子と踊る     栄子

特選 地 色鳥や江戸川沿ひの一茶句碑      奈保美

     鈴生りの柿かがやかす秋日和      左痴

     水引のつんつん伸びる雨の後      修治

     裸電球揺らして夜店秋まつり      奈保美

     対岸に回りて眺む薄紅葉        富子

     秋惜しむ綾子の秋の句読み尽し     賀子

     行く秋やゆるりゆるりとボートゆく   千恵子

     行く秋や首まで浸かる露店風呂     修治

     初袷香の匂ひの高座から        富子

     茶の花や母の単座の長き時       賀子

     行く秋や夫の遺せる日誌読む      明子

     ランタンの光に透ける糸すすき     豊三

     蜆蝶もつれて沈む草の花        光枝

     山門を入りて一面秋明菊        千恵子

     木犀の落花見てより静心        賀子

     異国人多きマンションそぞろ寒     奈保美

     振り返るべったら市の人の波      豊三

     行く秋や千年の杉に触れてみし     富子

     藤の蔓延びて二階の窓覗く       伸子

     秋の昼リュックサックの子ら散りて   晋也

     そゞろ寒米研ぐ音の隣家より      明子

     くわりんの実嗅ぎて元へと戻し置く   光枝

     行く秋や会ひたき人に会ひに出づ    賀子



第64回 栴檀東京句会(平成28年10月22日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     マニキュアは似合はぬ指や夜業終ふ   清子

     機械音のひびける工場秋簾       奈保美

     コスモスの手折らば風の消ゆるなり   賀子

     秋風にカーテン呼吸するごとく     富子

     東京駅のドームつつぬけ秋の空     賀子

     台風と共に戻りし休暇の子       ひとみ

     猿引の猿そつぽ向く秋思かな      晋也

     江の島に集ふヨットや天高し      伸子



第63回 栴檀東京句会(平成28年9月10日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 晩学に友だち増えて草の花       清子

特選 地 裏山に鳶帰りくる夕端居        栄子

特選 地 高階より赤子泣く声朝ぐもり      奈保美

特選 人 秋蝉の鋼の声のあはれなる       光枝

特選   休暇明ことさら高し子等の声      明子

     スカートの裾上げおろす休暇明け    賀子

     涼新たここより南木曽路かな      修治

     おつとりと風をかはして花芙蓉     光枝

     秋蝉や大樹の幹に紛れたる       清子

     鉦の音に赤子泣き止む祭の夜      ひとみ

     蝉時雨八十路の足取り確かなり     ひとみ

     白砂を波すべりゆく晩夏かな      奈保美

     縁側にふと聞こえるや秋の虫      豊三

     振り向かず後ろ姿の夏帽子       伸子

     雪ノ下かつて氷室のある辺り      栄子

     山手線みんな無口な休暇明け      修治

     休暇明けて屋の内広く静かなる     明子

     松島や島の数ほど蝉の声        豊三

     蝉時雨上野の山を包みたる       清子

     まだ誰も踏まぬ貝殻台風過       栄子

     鳴子宿盆棚飾る夏茗荷         豊三

     台風一過捨てられてあり破れ傘     明子

     

    ≪横浜吟行句会 9月11日≫

    

     秋薔薇イギリス館の鉄の門       光枝

     墓地裏は緩やかな坂葛の花       清子

     秋雨の異国の人の眠る丘        伸子

     秋霖や外人墓地へと石畳        賀子

     文豪の絶筆二行晩夏光         賀子

     外人墓地露草の花雨こぼし       奈保美



第62回 栴檀東京句会(平成28年8月27日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     徒長枝は風のアンテナ夏の家      富子

     手に止まる蝉草むらに放ちやり     千恵子

     小麦色入道雲に翳す腕         豊三

     木漏日に斑となれり夏帽子       奈保美

     蝉しぐれひときは高き声のあり     千恵子

     小判草の吹かるるほどの軽さかな    賀子

     秋暑し声高に行く中国語        光枝

     通り過ぎ背に匂ひ来る白粉花      富子

     梅雨寒や村落消えし塩屋崎       修治

     驟雨来るヘルメットに音たてて     うが

     包丁の切れ味鈍き秋暑かな       光枝



第61回 栴檀東京句会(平成28年7月9日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 影までも凜と立ちたる花菖蒲      清子

特選 地 周恩来の色紙くすみぬビヤホール    栄子

特選 人 見開けばねずみの走る梅雨夜警     うが

     梅雨冷や膝撫づる癖父ゆづり      明子

     青桐の陰の移れば吾も移り       賀子

     鵜の庭のけふ閉ざされてゐたりけり   光枝

     夏初め蕎麦屋に江戸の古地図かな    富子

     花合歓や風に乗りくる木琴音      栄子

     浴衣着て火点し頃の川原町       千恵子

     如何なりしや今年は蝦蟇の姿見ず    明子

     亀の子の小さき水尾を風くづす     奈保美

     剪りてなほ野の風まとひ花あやめ    光枝

     梅雨曇碁の攻防の泥みをり       明子

     苜蓿をためらはず踏む若さかな     栄子

     くるぶしへ四万六千日の雨       清子

     夏至の日の浦賀水道藍深し       ひとみ

     拾ひたる実梅の疵の強く匂ふ      光枝

     不揃ひも友手土産の四葩かな      富子

     花時計正午は黄色のパンジー      賀子

     持て余すほどの丈なり花菖蒲      明子

     捩花やなかのひとつの左巻き      光枝



第60回 栴檀東京句会(平成28年6月25日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 くれなゐの燃え移るかに風の罌粟    光枝

特選 地 罌粟の花木歌の祝歌響きけり      千恵子

特選 人 雛罌粟や見かけぬ安房の行商女     栄子

     大海へ散骨でよし罌粟坊主       修治

     迷ふ事色々あれど花は葉に       伸子

     閉店と開店並ぶ街薄暑         晋也

     子のおらぬ非日常にも馴れし初夏    ひとみ

     ブルーポピー白馬岳に雲の無し     賀子

     通る人あまりいなくて罌粟坊主     伸子

     しんがりを救護車の行く賀茂祭     光枝

     蚊喰鳥火傷の痕の痒きかな       明子

     ときめきて開けてしまひぬ落し文    賀子

     薔薇のかぜ窓辺に寄する母の椅子    光枝

     早苗田に囲まれてをり墓碑三つ     修治

     夕日受け茅花輝く長良川        豊三

     渓流の風を孕みて鯉幟         富子

     抽ん出て風に抗ふ罌粟坊主       奈保美



第59回 栴檀東京句会(平成28年5月14日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     目借時いくど問うてもうわの空     ひとみ

     温和しき男子増えたり鯉幟       晋也

     携帯に消せぬ番号鳥雲に        光枝

     胸元にペンの滲みや夏近し       清子

     薄暑なる吊革軽く握りたり       奈保美

     目借時夢にならない夢を見る      修治

     浅黒く節太き指サザエ焼く       ひとみ

     漆塗る座職に床の花の冷        修治

     山々に立つ電波塔鳥帰る        光枝

     母いつか老の繰言目借時        晋也

     箱階段いまも拭きつぐ余花の宿     修治

     爪切つて音におどろく目借時      光枝

     やはらかに渦交はれり花筏       ひとみ

     差しのぶる手をすり抜けて落花かな   千恵子

     暮れなづむ震災の町夕桜        奈保美

     新しき庭下駄下す薄暑かな       賀子



第58回 栴檀東京句会(平成28年4月23日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     ドーナツを手に予想屋の日永かな    晋也

     春風や色とりどりのスクーター     奈保美

     春一番バリケード五十枚倒しゆき    うが

     暮の春心の穴の深きまま        千恵子

     ロボットと並んで見上ぐ春満月     賀子

     茎立ちと並びて風に立ちゐたる     清子

     お下げ髪リボン結びに風光る      千恵子

     髪切つて春愁の根を断たむとす     光枝

     春惜しむ大仏を見て海を見て      光枝

     春眠や取り逃したる夢ひとつ      ひとみ

     自転車の空気満タン犬ふぐり      清子

     子ら送るアーチ長きよ風光る      清子

     病窓の桜も知らで眠る人        千恵子

     焼き烏賊の匂ひに並び花見かな     奈保美

     桜湯や築二百年の床光る        修治



第57回 栴檀東京句会(平成28年3月12日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 向い風春風少し含みたる        富子

特選 地 ジョギングの足音あまた犬ふぐり    清子

     寒晴や雲一片も寄せつけず       奈保美

     セーターを繕ふ丸き背中かな      ひとみ

     心病む友と見付くる犬ふぐり      千恵子

     墓の辺のうすき日差しや犬ふぐり    光枝

     料峭の物干ぎしと軋みけり       清子

     天神の裏の参道こぼれ梅        奈保美

     雛のまへ洗濯物をたたみをり      光枝

     アップルパイ切り分けてゐる四温かな  賀子

     北条の空堀深し草萌ゆる        奈保美

     浅間嶺の煙静かや寒の鯉        修治

     母からの荷の中バレンタインチョコ   晋也

     凍雲や頂上見えぬ石階段        ひとみ

     マスクして満員電車の孤独かな     賀子

     からだごと笑ふ赤子や犬ふぐり     奈保美



第56回 栴檀東京句会(平成28年2月27日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     精米の匂ふ店先寒雀          清子

     降る雪や別れゆく人送る日の      伸子

     水仙やひと日ひと日を生き抜いて    伸子

     玄関を出る受験子のいかり肩      ひとみ

     尻餅をつく子笑ふ子息白し       晋也

     初山河水車の創る小さき虹       賀子

     寒雀身を低くして狙ふ猫        伸子

     初天神スカイツリ―を過る雲      千恵子

     素うどんにひとつ割り入れ寒卵     光枝

     初美空ビル大楠を避けて建ち      修治

     お手付きやべそをかきたる歌留多の子  晋也

     初筑波終の住処と思ひけり       賀子

     冬の浜裸足で闊歩の少女かな      千恵子

     冴え返るベランダの罅くつきりと    ひとみ



第55回 栴檀東京句会(平成28年1月9日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 子らの位置ありし炬燵を仕舞ひけり   奈保美

特選 地 一面の黄葉の先のポストかな      ひとみ

     年用意友が習ひのキムチ漬け      富子

     風無きも山茶花紅を散らしをり     うが

     てんとう虫入っていいよ手袋に     賀子

     白鳥や原発の無人の町へ        修治

     ひと葉ごと色づき異なる黄葉かな    ひとみ

     原発の訴訟に敗れクリスマス      左痴

     温まりますと熊汁すすめらる      光枝

     ちんどん屋師走の橋を渡り来る     奈保美

     枯落葉の吹溜りなる駐車場       明子 

     色変えぬ松に静けさ金閣寺       栄子

     枯菊に入りては出たる雀かな      清子

     ブルドック五匹も連れて小春かな    修治



第54回 栴檀東京句会(平成27年12月19日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     日比谷公園ビル借景の紅葉かな     富子

     制服の警官並ぶ鯛焼屋         修治

     レコードをリネンで磨く師走かな    賀子

     御祓の膝を崩せる七五三        晋也

     山茶花の花びらサドルにへばり着き   うが

     紅葉をメニューにしたきカフェテラス  修治

     鮎落ちて川音とみに高かりし      修治

     初雪の降り積もりたる七七忌      賀子

     猫の餌ににじり寄るなり冬鴉      光枝

     重ね着の口ばかりなるコーチかな    晋也

     時雨道タール油浮きて地図めける    奈保美

     片付けもままならぬまま賀状買ふ    ひとみ

     まな板を埋め尽くして大根葉      栄子

     枯螳螂眼にみどり残りたる       賀子

     貼るカイロ胸の薄きにおさまれり    栄子



第53回 栴檀東京句会(平成27年11月14日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  風描きたくてコスモスを描いてをり   賀子

     新蕎麦の貼紙雨に流れをり       うが

     露けしや夫呼ぶ声のくぐもりて     ひとみ

     裏返す頃合い計る秋刀魚焼き      豊三

     閉店と朱書きの知らせ秋の風      清子

     柿日和句会の寺に長居して       奈保美

     はたはたの首柔らかく摘みをり     晋也

     露まみれテントを払ふ無精髭      豊三

     大噴石真中に置きて稲穂浪       栄子

     朝露に取入れを待つコンバイン     富子

     月兎捕れと抱き挙ぐ父の腕       修治

     ノーベル賞受賞者住む里紅葉晴     賀子

     露けしや新聞受へ行く下駄の      清子

     運動会海苔かほり立つ握り飯      ひとみ

     世の中のすべてを忘れ鯊日和      うが

     花野きて羅漢のお顔真似て見せ     奈保美



第52回 栴檀東京句(平成27年10月17日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     新蕎麦の貼紙雨に流れをり       うが

     チェンバロの音色にも似て秋陽射    光枝

     帰り道背に満月を感じつつ       富子

     種採の向日葵の首抱きてをり      晋也

     新蕎麦や味噌を肴に昼の酒       光枝

     急がずに晩学の径薄紅葉        修治

     散歩道ある日突然曼珠沙華       千恵子

     きちきちやねずみ男の顔に似て     晋也

     新蕎麦の文字つつましく貼り出され   ひとみ

     茸鍋人に言へない秘密あり       修治

     鰯雲警備忘れて眺めをり        うが

     木犀の香に目覚めたる誕生日      賀子

     紅すぎる紅葉に酔うてしまひけり    光枝

     秋日和子規の座卓の凹みかな      千恵子

     開封のシロップ残り夏終わる      豊三

     鱗雲大空一面幾千枚          うが



第51回 栴檀東京句会(平成27年9月12日土曜日)


       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 秋立つやラジオ囲みてホームレス    栄子

次選   雨蛙幼き顔をしてゐたる        賀子

次選   初ちろろ登校の子を出す朝の      清子

     肩に貼る湿布の匂ひ秋暑し       千恵子

     落蝉や見上げる先は澄みし空      清子

     新涼や遠くの人に絵手紙す       賀子

     かなかなや長き列ある惣菜屋      清子

     落つる蝉短くチチと鳴きにけり     千恵子

     新涼の頁をめくる指の先        光枝

     錠剤の見分けのつかぬ秋暑かな     栄子

     グランドに円陣を組み夏終る      光枝

     脚軽くラジオ体操涼新た        千恵子

     秋風やさよなら言わず去りし人     伸子



第50回 栴檀東京句会(平成27年8月22日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     踊りの輪緩るゆる解けて水の音     賀子

     落ちてまた堰堤登る山女魚かな     修治

     炎天下真一文字に口結び        富子

     長良川たちまち夕焼け流しけり     賀子

     炎天や音も大気も動かざる       ひとみ

     先客の静かに去りて蛍の夜       栄子

     麦稈帽遠き昔に戻りけり        奈保美

     初蝉や反戦集会果つる時        千恵子

     熱風の向ひ風なりリクルート      ひとみ

     祭果て静かに月の出てきたる      奈保美

     面胴着積まれ干しあり梅雨晴間     奈保美

     緑陰や深く息せば口笛に        千恵子

     片陰を選びてだだをこねたる子     清子

     地の火照りなほ冷めやらず星涼し    光枝

     蜘蛛の巣の払えば更に高きへと     富子



第49回 栴檀東京句会(平成27年7月11日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 短夜やトラックの列三陸へ       修治

特選 地 日盛りの一度下って上る道       富子

特選 人 夏祓雨やうやくに上がりけり      ひとみ

     明日よりは街軽くなる更衣       奈保美

     白紫陽花ところどころに翠さす     晋也

     緑陰の図書館通ふ杖の人        修治

     初夏や三行詩展覗き見て        栄子

     短夜や結末見えぬラブロマン      明子

     木槿垣まだ花つけず鵜匠の家      光枝

     明け易し草濡れてをりかがい跡     賀子

     桜桃忌図書館に傘忘れけり       清子

     羊羹の切口立ちぬ涼しかり       明子

     街灯の照らす若葉に光る雨       伸子

     梅雨晴の入日まつすぐ目を刺しぬ    栄子

     眼下なる木曽も長良も夏の川      光枝

     昼下がり浜木綿そろり蕾解く      左痴

     不如帰を真似て鳴く鳥明易し      栄子

     とんぼうの誘導棒にまとはりぬ     うが

     明易の残れる月の白さかな       光枝

     明易し電車聞こゆる旅枕        清子

     梅雨寒の何はさておく葱味噌湯     栄子

     俺よりも先にバジルに蝸牛       左痴

     葉桜やラジオ体操広場まで       奈保美


       ≪ 三四郎池吟行句会≫


特選 天 藤の棚おほひつくせり葛の花      賀子

特選 地 瀧の音にひかれて池の辺りまで     うが

特選 人 赤門を入る少年の捕虫網        光枝

     初蝉に学舎の杜の深まりぬ       清子

     壁剥落ものともせずに学府夏      栄子

     夏蝶のあとさきをゆく池の端      ひとみ



第48回 栴檀東京句会(平成27年6月27日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選   甲冑の目の奥に闇梅雨寒し       修治

特選   五月雨や昭和引きずる高架下      修治

     ぼうたんの風に広ぐる朱印帳      清子

     五月雨や音なき闇のアスファルト    ひとみ

     父の背に顔を埋むる祭髪        清子

     薫風や傘寿祝の花買ひに        千恵子

     あめんぼう懐かしき日々甦り      伸子

     もつれつつ蝶噴水の天辺に       賀子

     川風や汗もかかずの警備なり      うが

     滴りや自転車切通し          栄子

     小さき嘘星の数ほど天道虫       晋也

     緑陰やコーラスの声鳥の声       千恵子

     滴りや地層に光る黒雲母        栄子

     屋久島の幾千年の滴れり        清子

     新緑の葉裏光らせ渡る風        千恵子

     マンションの軒より長し鯉のぼり    豊三

     折り鶴の口のほどけて五月雨      奈保美



第47回 栴檀東京句会(平成27年5月9日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 花筏隅田川まで二十キロ        賀子

特選 地 残業の資料山積み朧かな        栄子

特選 人 街路樹の若葉はやくも破れたり     息吹

     いさかひの音立て開く日傘かな     栄子

     薫風嬰微睡みて宮参り        富子

     朝日受け月桃香る小浜島        豊三

     ラベンダーの苗植ゑにけり雨静か    明子

     大欠伸うつしうつされ菜種梅雨     賀子

     嬰の手の眠りて開く春の午後      富子

     遠足の列に遅るるケンケンパー     晋也

     風光るイルカの跳べる水しぶき     奈保美

     ホームより眺むる土手の躑躅燃ゆ    うが

     菖蒲田の声のみ聞こゆ雀かな      ひとみ

     棒さして空を揺らす子水草生ふ     清子

     水音の軽し花未だき菖蒲かな      明子

     チューリップ日の高ければ花開く    左痴

     桜草思へば遠き人ばかり        修治

     長々と手足伸ばして菖蒲風呂      千恵子

     訪問のナースの褒める藤の花      栄子

     紫の色濃きが好き花菖蒲        明子

     砂糖黍一本道の小浜島         豊三

     咲き満るほどに翳濃く八重桜     光枝

     三日ほど真白き日記春の雨       清子

     ランドセル馴染みてきたりあやめ草   奈保美

     七歳は七歳の自我花菖蒲        晋也

     卓上桜盆栽紅兆す          ひとみ

     握り飯雀の子らと分け合へり      千恵子

     先生の笛のひと吹き遠足子       清子

     水温む隣の夫婦入院中         奈保美

     やはらかき頬のふくらみ綿毛吹く    賀子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第46回 栴檀東京句会(平成27年4月4日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     太き枝腕の如く夜の桜         左痴

     花曇る胸突坂の空遠き         清子

     早蕨ののの字の産毛やはらかし     賀子

     花の雨病む人の声か細くて       伸子

     薄き濃き風の行方や花筏        清子



第45回 栴檀東京句会(平成27年3月14日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 猫柳ほほけとしてけものめく     光枝

特選 地 白鷺の抜き足差し足春浅き       光枝

     春泥少し乾ける犬の足        清子

     妣作りし草餅の香の懐かしき      千恵子

     淋しげな人に挨拶春浅し        伸子

     白梅の咲きはじめたる女坂       光枝

     下萌やひときは弾む子らの声      奈保美

     冴返る誰か恋文くれないか       千恵子

     道祖神吾に似てをり団子花       修治

     マフラーの昨夜のかほり後悔す     ひとみ

     春の宵湯船に沈み句を待てり      千恵子

     花びらの型に布裁つ浅き春       賀子

     鯨幕たためば香る白き梅        清子

     楷の木の枝は露はに春浅し       明子

     同棲のスタートバレンタインの日    晋也

     在りし日の父母を偲べる春炬燵     伸子

     春浅し窓曇らせて青菜茹づ       清子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第44回 栴檀東京句会(平成27年2月28日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     少女らのひそひそ話薄氷        晋也

     捨てられぬもののひとつや緋のショール 賀子

     校帽の中に雪玉入れ来た       晋也

     楽しげな手話の衣擦れ冬麗       息吹

     雪しづる音に煌めきあるごとし     光枝

     ストーブへ一部始終を話しけり     清子

     道訪ふて道連れとなり梅を観る     修治

     食卓の広きを知れり雪明かり      ひとみ

     番犬に吠えられてをる毛皮かな     晋也

     句帖より今日の梅の香零れたり     清子

     冬桜淡しゆめともうつつとも      光枝

     弱音のペダル踏みをり牡丹雪      栄子

     着ぶくれの夜勤風の強きこと      うが

     凍雲や靴擦れ痛む帰り道        ひとみ

     寒月に見透かされたる思ひかな     光枝

     

*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第43回 栴檀東京句会(平成27年1月24日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 寒柝打つときどき月を見上げては    奈保美

特選   正月の凧揚げてをる国府跡       晋也

特選   坂多き街句会や漱石忌        光枝

特選   暖房のボイラー唸る去年今年      明子

     誰も見ぬ選挙ポスター寒波来る     清子

     山門の海に向かひ水仙花        栄子

     雲一つ無き広き空三日かな       千恵子

     初鏡口角そと上げてみる       千恵子

     てのひらにしばし転が竜の玉     光枝

     福引や欲のなき子のよく当た     清子

     かたまりて凛と静かや水仙花      奈保美

     裸木となりて雄々しき辛夷の木     賀子

     水仙の香小児科医院かな       修治

     天井に星座を貼りて去年今年      栄子

     いつからか泣くこと忘れ吾亦紅     伸子

     今年また形見の壺に水仙花       千恵子

     初御空江戸を向きたる政宗像      晋也

     圓楽の落語の凧のよく揚り       うが


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第42回 栴檀東京句会(平成26年12月13日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  瞬けば消えてしまいそう冬夕焼     賀子

     赤き耳赤き頬の子蜜柑買ふ       ひとみ

     菊坂のコロッケ買うて一葉忌      光枝

     爪先に革靴固し冬の朝         富子

     現し世に何を忘れて返り花       光枝

     息災の音山茶花の垣根越し       賀子

     指折りつ歩く老女や小六月      千恵子

     北風を紙飛行機で刺す子かな      息吹

     山茶花の囲みたる家しんとして     伸子

     柏手が柏手を呼ぶ酉の市        賀子

     一輪の白き花より十二月        栄子

     はんぶんこ覚えて蜜柑好きになり    賀子

     新米を結びたる掌の桜色        ひとみ

     木々はみな日を逃さじと蜜柑山     光枝

     存分に冬日抱きて羽を閉づ       栄子

     山茶花の垣見えくれば母の家      光枝

     着ぶくれて女の心捨てにけり      清子

     枝先を引き寄せ愛でる紅葉かな     富子

     着ぶくれて里の方言忘れけり      奈保美


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第41回 栴檀東京句会平成26年11月15日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     運動会顔で仕上がるピラミッド     栄子

     五線紙へ音符書くごと木の実落つ    清子

     身に入むや校庭占むる仮設      千恵子

     仏頭の広き額のさやけしや       光枝

     暮早し工事現場の点滅燈        うが

     ゴンドラの下は白樺楢もみじ      左痴

     踏石の白く浮ききし暮早し       奈保美

     末枯るる野仏ここに在せしか      賀子

     朴の葉の音積むごとく落ちにけり    修治

     どんぐりもメタボスリムのありにけり  千恵子

     竹春や独り住居の母のこと       ひとみ

     クレーン車でピアノ着きたる文化の日  賀子

     秋時雨アンティークショップの古時計  伸子

     やはらかき土をまとへる甘藷かな    ひとみ

     枯蓮見に来る理由の二つ三つ      栄子

     不細工も個性のひとつわりんの実    光枝

     吊るされし塩引鮭の千の貌       修治

     二人居のしじまに秋の夕日かな     奈保美

     こだはりのあの地あの蔵新走り     修治

     日短のシルエットとなり帰る友     富子

     小春日や穏やかなれば夫も又      明子

     すずかけの黄葉を踏みて晩学す     修治

     短日や門扉の把手冷え始       豊三

     大根干す筑波颪に背をおされ      賀子


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第40回 栴檀東京句会平成26年10月25日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     蒼穹の雲ひとつのみ竹の春       うが

     もの思ふ間にくづれけり鰯雲      光枝

     門川の水音高し竹の春         修治

     先を行く丸き背の夫竹の春       清子

     今日晴れて金木犀の花の雨       左痴

     豆腐屋の鉦行き過ぎる秋思かな     栄子

     曼珠沙華山口淑子召されけり      奈保美

     秋茄子や嫁と呼ばれて四十年      富子

     綾子句集栗は丹波と思ひけり      光枝

     車庫入れのバックゆるりと敬老の日   富子

     木犀の雨を孕みて揺れてをり      ひとみ

     ちちろ虫ワイン静かに飲みし夜     伸子

     赤とんぼ自転車漕ぎゆく力士かな    千恵子

     湯の音に消えては湧きぬ虫の声     清子

     落ち鮎や串さし焼かれ火も荒ぶ     修治

     秋の日や抜きし白髪の光りたり     息吹

     雁渡し仕上の漆塗り終へり       修治

     我一人の遊覧船や小鳥来る       栄子

     嬰得しとふ句友の便り秋うらら     千恵子

     椿三十郎出て来さうなる芒原      晋也

     身にしむや文字薄れゆく師の手紙    栄子

     湯上りの鏡曇りて秋深む        富子

     いただきは風に騒ぎて竹の春      光枝

     栗を剥く少女の指の赤きまめ      栄子

     木犀の香や取り込めるシーツより    千恵子

     カタカタとミシン踏む朝小鳥来る    清子



第39回 栴檀東京句会平成26年9月13日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選 天 ミンミンとオーシツクツクせめぎ合ひ  千恵子

   地 かなかなにあの世の事を聞ひてみる   伸子

     もの書けばひらがな多き残暑かな    光枝

     夫の手を掴みて見たる天の川      富子

     新涼や工事現場の昼休み        うが

     水底の小石の揺らぎ秋め       ひとみ

     終バスに乗り遅れたりちちろ鳴く    清子

     洗濯物たちまち乾く黄カンナ      光枝

     追ひかける最後の花火音虚し      豊三

     子らのゐぬ校庭白く夏果つる      奈保美

     こほろぎの初鳴きを聞く夜更かな    うが

     庭の竹一剪つて盆用意         光枝

     新涼や静かに茶葉の広がりぬ      ひとみ

     妻の姓名乗りたる君吾亦紅       栄子

     新涼や句座を訪ふ若き人        千恵子

     鬼灯をほぐす時々息止めて       光枝

     金のなき友梨二つ持参せり       うが

     手汚れの母の歳時記秋灯下       修治

     トレモロのギターの音色秋涼し     明子

     新涼や白磁の皿に置くゼリー      栄子

     一山を背負ふ青鷺木のてつぺん     栄子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第38回 栴檀東京句会(平成26年8月23日土曜日)


       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  母親を休みた日のサングラス     清子

     声とばし汗を飛ばして野球の児     奈保美

     輪郭のゆるむビル群梅雨曇り      ひとみ

     肺の影薄くなりたり夾竹桃       栄子

     弁天の見ゆれど遠し蓮の花       清子

     せせらぎと蝉の鳴き声響き合ふ     千恵子

     突然の蝉の鳴き声句座緩む       千恵子

     俳人と紹介さるる帰省かな       晋也

     広島や今年も赤き夾竹桃        明子

     炎天の日陰警備の身を寄する      うが

     青林檎塩振る習ひ母ゆずり       栄子

     夕立や母の小言の中断す        清子

     ごきぶりのよろぼひ出でし溽暑かな   千恵子

     夾竹桃戦ありし日忘るまじ       千恵子

     誰も居ぬ村に咲きたる夾竹桃      清子

     風ひとつ無き夜の闇夾竹桃       ひとみ

     綿パンが腿にまとわる大暑かな     豊三

     片蔭や日銀前のカレー売り       栄子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第37回 栴檀東京句会(平成26年7月19日土曜日)
 

       ≪ 入 選 句 ≫


     亡母は鮎頭より食べけり       うが

     鮎の宿仕掛け自慢で夜も更け     修治

     手触りに母思ひ出す単衣かな      富子

     サクランボ口を窄めて吸ひにけり    左痴

     梅雨晴間乳歯五本の笑顔かな      富子

     独り身の蛇衣を脱ぐズボンかな     晋也

     紫陽花の身震ひ雨をこぼしけり     光枝

     梅雨の蝶追ふ三歳児足縺       うが

     五月晴手に乗るほどの富士拝む     清子

     囮鮎入荷の幟雨に濡る         明子

     白シャツや弧を描きたる水飲めり    清子

     梅雨晴間一気に白き街となる      晋也

     短夜や紙一重なり佳句と駄句      光枝

     梅雨曇り就活の靴磨きをり       明子

     ぽろぽろと落ちてまた落つ柿の花    修治

     梅雨曇りまとまりもせぬこの話     修治

     残り香をもろとも剪りて白芍薬     奈保美

     青き空青き海映ゆ沖縄忌        千恵子

     小魚を河口に寄する大夕焼       栄子

     

*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第36回 栴檀東京句会(平成26年6月28日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     結葉や隠るる如く崩れ塚        栄子

     湧水を顔いっぱいに薄暑かな      修治

     初夏の風書かねばならぬ文のあり    伸子

     道普請肩に背負へる土ぬくし      奈保美

     蜘蛛の囲や小さき手入れ繰り返す    晋也

     バルテュスの少女現る夏の夢      修治

     拝殿に響くジャズの音薄暑かな     栄子

     揺るる葉に天道虫のじつとをり     ひとみ

     熱中症死者出て五月まだ五月      左痴

     み仏の指より蜘蛛の糸ひとすぢ     光枝

     一匹の蜥蜴動かぬポリバケツ      伸子

     幼子の日焼けの腕のくびれかな     富子

     その影のこころもとなき新樹かな    光枝

     腕捲りして出勤す薄暑かな       伸子

     雨靴の足どり軽き梅雨夕焼       清子

     初恋の人住む駅合歓の花       修治

     十薬の駅舎に母を待ちてをり      晋也

     どくだみの小さきブーケを玄関に    栄子

     梅雨寒や掃除ロボット動きをり     修治

     掬はれて光をこぼす春の水       奈保美

     梅雨の雷しりとり遊びとぎれけり    奈保美


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第35回 栴檀東京句会(平成26年5月31日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特選  天 はくれんを抱けば羽ばたくやもしれぬ  光枝

   地 玄関の躑躅の蕾入院日         栄子

     母の家赤き躑躅を垣根す       光枝

     大輪の牡丹一輪手水鉢         千恵子

     昭和の日日の丸の赤褪せにけり     千恵子

     杖の先瑠璃点々と犬ふぐり       光枝

     散り敷きて雨に紅増す躑躅かな     明子

     川面にも燃え立つ緑溢れさせ      左痴

     摘み取りて蜜吸ひしこと紅躑躅     明子

     新緑の葉擦れの音の柔らかき      富子

     この宙地球春の星として      光枝

     婆二人会話止らぬ春の暮        千恵子

     鳥交る恋の話の少女過ぐ        晋也

     鯉のぼり信用金庫屋上に        晋也

     軽鴨の子の前に後にき泳ぎ      千恵子

     庭園の一番奥や著莪の群れ       富子

     ベルマーク切り抜く母や昭和の日    晋也

     多摩川の渡しの跡や姫女苑       明子

     つと触れて赤き躑躅の冷たきや     富子

     チューリップ学舎に日が落ちていく   伸子

     翡翠のひと岩ごとに青き風       栄子

     身も緩む睡蓮咲し午後の二時      修治

     

*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第34回 栴檀東京句会(平成26年4月26日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  今日の日もまぁ良しとして初桜       伸子

     花粉症をさなき声になる女       晋也

     行く春や路面電車の発車音       奈保美

     子を抱きて花と写れる若き母      晋也

     行春や亀はこぞりて頭上ぐ       光枝

     母の手のやはらかき皺桜餅       ひとみ

     花を縫ひ飛行機雲の伸びゆけり     千恵子

     八橋の杭朽ちかけて白菖蒲       富子

     行春や亡き妻と来し異国の地      ひとみ

     忽然と天に逝く者落花かな       左痴

     啓蟄や地下鉄出口間違へ       光枝

     糸柳萌黄の風を起しをり        千恵子

     卒業歌男子の声のみ響きけり      ひとみ

     春うらら鳶職の技軽やかに       伸子

     逝きし者何処に居るや花の昼      左痴

     行く春やゴミに混りて参考書      晋也

     用無くてまた出でてみぬ春の庭     富子

     朝日浴び枝垂れ桜の色生まる      左痴

     探梅や芋焼く辺りにぎはへり      保奈美

     花冷やパソコンと我フリーズす     光枝

     風光る捨舟波に揺らぎをり       奈保美

     春ショールつけて何度も見る鏡     伸子

     満開を夜に枝垂るる桜かな       富子


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第33回 栴檀東京句会(平成26年3月15日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  十年を獺の祭の六畳間         晋也

     雛の日言葉かけずに終りけり      はれ子

     春の雪厨の窓のほの明り        千恵子

     紅梅の笑み白梅の知らぬ顔       左痴

     春の雪集落にヘリ出勤す        奈保美

     とめどなく春雪海に降りゐたり     光枝

     春の雪春の蕾を隠しり        富子

     やんはりと断りしこと木の芽和     晋也

     残雪の土くれめくや土の上       拓郎

     千の絵馬抱いて湯島の梅咲きぬ     修治

     雪しづり撥ね返る枝揺れ止まず     明子

     春の雪遺影の父は目を細め       晋也

     春の雪一夜の雨に消えにけり      明子

     コトコトとヒールの音の寒の廊     うが

     春雪や限界集落東京にも        はれ子

     雛祭妣を想ひてちらし寿司       千恵子

     古雛笏も扇も持ちたまはず       光枝

     特養の紙雛作り賑はえり        千恵子

     残雪のなかなか減らず二月尽      左痴

     声にして三月といふ語の響き      富子

     雪解けの音の響ける墓石かな      拓郎

     各駅停車春風ふわと乗りきたる     光枝

     春の空刷毛もて雲をおきたるか     光枝

     櫻梅同時に咲きぬ庭なりき       うが

     日の温さ頼みに春の雪を掻く      明子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第32回 栴檀東京句会(平成26年2月22日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     屈託の友を誘はむ梅便り        富子

     幹虚ろ老梅いよよ真白なり       光枝

     お年玉手にするまでの正座かな     奈保美

     春寒し伏目がちなる伎芸天       光枝

     からくにの言葉弾みぬ梅の園      栄子

     垣根超し梅探りけり配達夫       明子

     春寒し枯葉除きて土を見む       うが

     かいぼりや冬鯉る井の頭       豊三

     病みをりて指折るワレに梅香る     奈保美

     見つめ合マスクとマスク通り過   富子

     一路線残る都電や梅咲きぬ       修治

     冴返る早足遅足夜の更けぬ       うが

     梅咲きぬ少女の頬を染めし色      左痴

     七日粥青き匂ひの湯気立てり      奈保美

     靴音の我に響きて冴返る        光枝

     採らでおく見舞ひ帰りの蕗の薹     栄子

     駅そばに七味利かせて雪の夜      修治

     

*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第31回 栴檀東京句会(平成26年1月18日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  荒ぶれる波の向かうの山眠る      ひとみ

特 選  秒針のひたすら早し十二月       はれ子

特 選  冬の木の下を静かに水流る       拓郎

特 選  一面のすすきの原雲流れ       伸子

     名乗り上ぐる声の弾みて初句会     光枝

     人去り工事現場の冬日落つ      伸子

     蛇口より漏るる雫や去年今年      奈保美

     はとする冷た妻の足の裏      修治

     掲示板謹賀新年紙一         豊三

     イヤホンに聖歌患者のクリスマス    左痴

     手冷たしさらに冷たガラス窓     光枝

     枯るるもの枯れて木曽谷眠りけり    修治

     イルミネーション灯りてよりの寒さかな 奈保美

     人気無駐車場閉め年暮るる      うが

     クリスマスキャロル掃除の手を止めて  はれ子

     木枯を赤ずきんの子喜べり       拓郎

     カモメ立つ風が冷たし杭の上      豊三

     通し矢の弓を持ちたる春着かな     光枝

     磔刑の血の滴りの冬薔薇        左痴

     みちのくの水の冷たき生家かな     晋也

     瞼閉ぢオレンジ色の冬日受く      奈央

     父の忌にせめて供へる蜜林檎      伸子

     氏神に初詣列長蛇なり         千恵子

     福袋ロボット当たるものもあり     晋也

     朝刊の脳天をつく冷たさよ       奈保美

     家の中探しまわりし行火かな      うが

     亡き人の物増えぬ部屋冷たしや     栄子

     底冷のひと日離婚の報あり      千恵子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第30回 栴檀東京句会(平成25年12月21日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


特 選  年の暮赤信号の燃えるやう       ひとみ

特 選  七五三芭蕉の句碑を通り過ぐ      晋也

     万羽鶴来空の限りを声覆ふ       奈保美

     人影のなき境内の石蕗の花       千恵子

     歯科医院椅子は冬青空を向く      光枝

     アメ横にだみ声の飛ぶ年の市      奈保美

     遠汽笛聞こゆる町の年の暮       伸子

     黄葉して首賭けイチョウの名の由来   富子

     冬晴に栴檀坊主星のごと        千恵子

     歳晩の街見下せる星ひとつ       光枝

     木枯しに押されて進む補助輪車     ひとみ

     街灯に照らされながら降る落葉     伸子

     冬青空機影とカラス交差せり      千恵子

     人違ひさるることあり年の暮      晋也

     ごみ箱の蓋半開き冬の星        拓郎

     居眠りするホームレス氏や小六月    はれ子

     又来たり年々早き年の暮        うが

     柝の音や昭和も遠く年の暮       修治

     初冬の終着までの小説論        拓郎

     前髪をしきりに払ふ七五三       ひとみ

     朝の日をひたすら貰ふ野菊かな     はれ子

     年の暮胸に収めし事多く        伸子

     冬の蜂ぽとりと落ちて斜陽館      修治

     シーツ交換見ている患者冬の窓     左痴


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第29回 栴檀東京句会(平成25年11月23日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     春そこに一瞬来たり帰り花       奈央

     秋麗ら柄のパンストはいてみし     はれ子

     左近太の突く音速し帰り花       修治

     案山子見る老人施設の車列かな     千恵子

     秋出水溝の金魚を子ら掬ふ       明子

     ばちばちと袋を叩く飛蝗かな      晋也

     婚礼の日取り決まりて秋が行く     伸子

     身に入むや空抱瓶の御ちょぼ      奈保美 

     秋鱒をさばきて卵じっと見      うが

     誕生日に見付けぬ躑躅の帰り花     明子

     急ぎ足ふと止めらるる帰り花      千恵子

     虫籠を抱へて寝入る親子かな      ひとみ

     鹿の眼の我を向きゐて我を見ず     光枝

     椎の実でござる櫟の実でごわす     晋也

     山手線シートぬくもり秋深し      豊三

     娘来て夫の夜長の華やげり       富子

     這ふゐもり厨の窓に透けて見ゆ     伸子

     初雪の富士たちまちに雲の入る     拓郎

     雲間より日の漏れ来たり帰り花     ひとみ

     秋風に川波筋目立てにけり       奈保美

     落穂拾ひしエコカーの展示場     はれ子

     秋暁に残り火のごと漁火船       富子

     蜜柑といふ宇宙いつきに頬張れり    ひとみ

     秋風が袖に溜まる下り坂        豊三

     栴檀の大樹の先の天高し        千恵子

     秋の蚊を厭ひ庭草長くるまま      明子

     白鷺や直立不動獲物待つ        豊三

     食ひかけの柿のあるなり空のうへ    光枝

     


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第28回 栴檀東京句会(平成25年10月26日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     行楽に栗茹でくれし祖母なりき     千恵子

     栗剥いて殻積もりゆく長話       奈央

     秋桜地に伏して姨捨の村        左痴

     塀のうへ坐す猫もまた月の友      光枝

     台風のゴジラのごとく咆哮す      千恵子

     秋扇半ば閉ゐて弄ぶ         光枝

     秋うららアンテナショップの訛    奈保美

     台風の過ぎて夕空あかね雲       千恵子

     コスモスの目路の限りを咲き尽く   富子

     栗御飯作りて先は仏壇に       伸子

     琴流る茶会の菓子は栗鹿の子      修治

     爽やかや何も纏はぬ言葉たち      拓郎

     信号が青に変りて鱗雲         奈央

     秋晴れをそのまます新校舎      豊三

     カーソルのフリーズ解けず芋の秋    修治

     原発シュプレヒコール秋暑し     千恵子

     ラフランス与謝野晶子の子沢山     晋也

     毬栗が触るるや土に葉に風に      拓郎

     長楽寺数多の句碑や月見宴       左痴

     土付きの生姜を賜ふ葉も匂ふ      明子

     姨捨の駅舎を照らす望の月。      左痴

     紅葉散るビストロ店の広き窓      修治

     空一枚めくった様に野分あと      奈央

     栗剥きつつ母若き日の話など      光枝

     園児来てジャングルジムの空高し    奈保美

     長き夜や隣も灯り点いてをり      奈央

     


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第27回 栴檀東京句会(平成成25年9月21日土曜日)

       ≪ 入 選 句 ≫


     この世をばしばし離るる昼寝かな    光枝

     通夜帰り大きな月の付き来たる     千恵子

     掌に石鹸固し秋立ちぬ         富子

     揚羽舞ふやうに女の扇かな       光枝

     敗戦日凍土で知りし父逝けり     ひとみ

     熱き茶の美味しと思ふ白露かな     千恵子

     武骨なる手で酌み交はす冷酒かな    ひとみ

     ころぎの気配を探す網戸ごし     豊三

     新盆の人想ふ時風立てり        千恵子

     魚簗の竹崩れて人の姿見ず       明子

     雨上り上弦の月葉陰より        明子

     旅の夜の一期一会や盆の月       光枝

     名月に兎を見るや老いし猫       はれ子

     母刺して子を刺してをる秋の蚊よ    晋也

     君は上僕は下流へ山女釣        修治

     天花粉より始めをる床屋かな      晋也

     消えかけて再び濃しや夕の虹      拓郎


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第26回 栴檀東京句会(平成25年8月22日土曜日)


特 選  蝉時雨この世の音を掻き消して     伸子

特 選  二の腕のあたり秋立つ気配かな     光枝

特 選  立秋や森の陰影きはだて       ひとみ

     昼顔や水門一つ閉ぢてあり       奈保美

     青実付オリーブの枝活けてあり    明子

     孝行をすれば良かった豆御飯      伸子

     秋立つや出勤前に髪を切り       彰二

     片蔭の途切れしばしの思案かな     光枝

     夏の朝溝小蟹の走る町         明子

     下駄の子のかくれんばうや草茂る    はれ子

     朝顔の行灯提げて大江戸線       修治

     かくまでも蚊の跡数へあげてをり    晋也

     山椒青葉に今年まだ来ぬ黒揚羽     明子

     階段の靴音響く夏休          ひとみ

     向日葵の向きたい方を向いてゐる    光枝

     生姜糖舐めてアイデア生き生きと    左痴

     落人の倅に生まれ魚簗を打つ      修治

     川風に無花果の実の太りけり      奈保美

     明日を知らず空き地に咲きし夏薊    富子

     半分に欠けて涼しや夏の月       光枝

     初蝉の園児の声に掻き消され      千恵子

     立秋や腕時計あと白々と        彰二

     虹に顔あれば笑つてゐたりけり     拓郎

     自転車の漕ぎ出すを待ち蝉時雨     富子

     蕎麦の花武州機場は寂れけり      修治

     一人分だけの涼しさ日傘差す      奈央

     手の平に握れるほどの秋茄子      左痴

     兄病みてカナカナが鳴く日暮れ坂    伸子

     秋茜警備せる身につきまとひ      彰二

     回転ドアはじき出されて炎暑かな    光枝

     ファイティングポーズとりをる蝉の殻  晋也


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第25回 栴檀東京句(平成25年7月20日土曜日)


     ランドセル弾みゆきけり夕焼空     光枝

     若さかな汗の一団過ぎゆきぬ      晋也

     夏草に埋るる磁石屋敷跡        富子

     正面に夕焼け真後ろに夜        奈央

     夕焼と赤子を背負ふ帰り道       ひとみ

     逆光の富士黒々と大夕焼        明子

     夕焼や田鯉泥吸泥吐きぬ       修治

     夕焼見るたび想ふ人のあり      千恵子

     茎に葉に紫紺流るる茄子かな      晋也

     空に消ゆる別れの讃美歌梅雨の蝶    光枝

     懲りもせずまたも金魚を飼始む     彰二

     被曝せしてふ浜木綿の白きかな     富子

     辣韮漬ふり塩に立つ匂ひかな      奈保美

     携帯の液晶眩し熱帯夜         奈央

     車窓より見る夕焼途中下車      伸子

     青蛙向るレンズに微動せず      千恵子

     凌霄花電柱のぼる逞しき        左痴

     枇杷の実の小さきでべそ見つけたり   晋也

     白南風に切りし子の髪散りゆけり    拓郎

     懐に溢るるほどの夕焼かな       拓郎

     すれ違ふ日焼止の香海思ふ       奈央

     夕焼足を止めたり親子連れ      豊三

     何もせずただ見てゐたき夕焼を     伸子

                  

*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。



第24回 栴檀東京句会(平成25年6月22日土曜日)


特 選  川岸をたたく白波夏は来ぬ       奈保美

特 選  曇天の落ちてきさうな梅雨入かな    光枝

     菖蒲色サマードレスとしてみむか    左痴

     万華鏡くるくる廻し夏に入る      奈央

     走り梅雨シュレッダーにかけ古手紙   修治

     幽かなる灯の映りたる柿若葉      拓郎

     四迷忌やくたばるてふ語聞かずなりぬ  はれ子

     春岬地球の縁の大型船         富子

     手のひらの蜥蜴挨拶代わりかな     晋也

     空梅雨の歩みの先スカイツリ     豊三

     十薬の雨の匂ひにとけ込めり      千恵子

     ジェットコースターくねりたる先梅雨の空 奈央

     紫を豊かに垂れて花菖蒲        光枝

     蝸牛殻を残して消えにけり       左痴

     青あらし怒り鎮むる飴一つ       富子

     優駿のたてがみ初夏の風に揺れ     千恵子

     雨粒の花に重たき梅雨に入る      保奈美

     豆飯や故郷想母思         修治

     桜んぼ拾ふ幼児(おさな)の丸き尻   明子

     単線のホームに揺るる虞美人草     明子

     焼鳥のにほふ路地裏夏に入る      ひとみ

     擬宝珠の花芽ゆらりと立ちあがり    富子

     風運ぶ薔薇の花びら座敷まで      彰二

     川土手の雨の明る夏きざす      保奈美

     天井の蛾に気付きたる一人かな     拓郎

     走り梅雨蛍光灯の薄明かり       ひとみ

     しげる異国の人の眠る墓       伸子

             

*下線の処は、辻主宰または森本同人の斧正で直した部分です。



第23回 栴檀東京句会(平成25年5月25日土曜日)


特 選  新キャベツ春の空気も巻いてあり    富子

特 選  引く椅子の少し重たき穀雨かな     富子

特 選  春宵や独りがよくて人恋し       光枝

     椿落つ碧梧桐の句思ひけり       奈保美

     枝なりに連翹ひかり流しをり      恵美子

     包丁をさくりと入れて春キャベツ    光枝

     つばくろの夜の陸橋往き来せり     晋也

     三線が囀りを呼ぶ今帰仁村       豊三

     杖だけどステッキとなる春の空     修治

     槻若葉古びし赤き丸ポスト       明子

     筍の剥き剥き剥きて穂先かな      千恵子

     菜の花や秩父連山迫りくる       奈保美

     春深む油断天目見に行かむ       はれ子

     松の葉が留めし花の落ちにけり     拓郎

     葉の間よりひしめき顔出す躑躅かな   ひとみ

     桜貝小指の爪と似てたり       豊三

     母の日メール操作を教へをり     晋也

     撫子の日ごと増へたる花の数      彰二

     板塀の紅殻褪する暮の春        明子

     夏初めさざ波光連れて来し       奈央

     国道の端タンポポのすつと立つ     ひとみ

     ラーメンにもやしばかりや昭和の日   晋也

     母の日好みし茶葉を淹れにけり    奈保美

     右に春の海左に春の山         拓郎

     ふるさとのにほひがするヨモギの葉   伸子

     骨入れて墓を眺むる徂春かな      恵美子

     屋上のフェンスの先に春の富士     奈央

     雨粒の一粒ずつの春日かな       拓郎

     段々畑腹に抱へて山笑ふ        光枝

     仮説住目覚めれば青田夢であった    はれ子

     擦れ違ふ人の残り香荷風の忌      ひとみ

     母の日の花に添へたる赤き薔薇    彰二

     ベランダのサンダルに止まる斑蝶    明子

     本を手に目は初蝶を追ひにけり     光枝

     母の日や在りし日のこと次々と     千恵子

     ワイシャツの腕捲りたる薄暑かな    奈央

     羊の毛刈る間も吾を目で追ひぬ     晋也

        

*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第22回 栴檀東京句会(平成25年4月27日土曜日)


     降り立てば無人駅なりのどけしや    光枝

     春の虹の背より立ちをりぬ      はれ子

     花曇不意に振向く白き猫        明子

     長閑しや寄り目見せ来る男の子    晋也

     伸びをなし欠伸なす猫長閑なり     左痴

     のどけしや牛の反芻顎伸ばし      奈保美

     車椅子連ねて散歩長閑なる       千恵子

     長閑けしやバイエルの曲いつまでも   明子

     春風まま揺るる枝揺れぬ枝      富子

     入学の祝に一句忍ばしぬ        晋也

     朧夜の雑音多きラジオかな       拓郎

     花円空展の人まばら          はれ子

     花冷えや蛍光灯の暗かりき       ひとみ

     春の風邪事務所の午後の長きこと    奈央

     雨あとの花びら一直線に落つ      拓郎

     花冷の雨の銀座のお練りかな      千恵子

     だんだんと円座広る花の下      奈央

     花の雨その下を行く棺あり       伸子

     花冷えや音なく雨の降り始む      ひとみ

     「あらうたてやな」とふ祖母の声長閑なる 明子

     春泥の続きをるなり三和土まで     光枝

     喪服誂ふ帰りの道の初桜        光枝           


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。


第21回 栴檀東京句会(平成25年3月16日土曜日)


     冴返る裏階段の薄埃          明子

     参考書唇で読む受験生         晋也

     ビニール袋くらげの様に飛ぶ弥生    奈央

     糸巻を使果して冬終る         富子

     真直ぐに春水を切る真鯉かな      晋也

     遠い日の父母のぬくもり恋し冬     伸子

     独りっきり突っ立っている春の闇    奈央

     手洗ひに起きて雛の白き顔       光枝

     三月や旅行鞄に夢詰めて        千恵子

     踏まれぬか摘まれはせぬか蕗のたう   光枝

     三月や開けては並べマトリューシュカ  明子

     夕飯に眼張の煮付来る        豊三

     春の風ポニーテールの三拍子      晋也

     浮れ猫しなだれかかる夫の膝      光枝

     春一番抗ふごとく鴉啼く        千恵子

     薄氷のごときものありわが胸に     光枝

     肉厚の若布の夕餉旅終わる       ひとみ

     梅散りて鼻毛もどきの蘂残      彰二

     真夜中のサッカー練習声冴る     ひとみ

     ペチコート水仙風に笑ひけり      左痴

     寒月夜警備する身の縮みをり      彰二

     三月の陽射し瞼に暖か        富子

     夕照に芽柳風を梳きてをり       奈保美


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。


第20回 栴檀東京句会(平成25年2月23日土曜日)


特 選  ひとり居の起きて寒しや寝て寒し    光枝

特 選  雪予報すでに怯える大都会       左痴

特 選  初雪の積りサイレンしきりなり     千恵子

特 選  冬燈標識の裏照らしをり        拓郎

特 選  ひとつ早い電車に乗りて初句会     光枝

     高速道の灯の尖りたる霜夜かな     奈保美

     初電車いつもと違ふホームかな     奈央

     冬の朝背筋伸ばして風斬って      伸子

     初句会披露の声の初々し        千恵子

     寒三日月触れば指の切れさうな     光枝

     下萌やコンクリートの割れ目より    拓郎

     小走りにハイヒールの音冬の朝     明子

     擦れ違ふ漢鼻唄春隣          千恵子

     迷ひたる友を迎へに寒の雨       明子

     カーテンを開けて目が合ふ雪だるま   奈央

     寒夕焼希望失望包み込む        はれ子

     日脚伸ぶ髪短めにカットせり      千恵子

     石壁を伝ひ落ちたる枯葉かな      拓郎

     二人きり上司と尿る冬の朝       晋也


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。


第19回 栴檀東京句会(平成25年1月19日土曜日)


       顎に少し去年の髭を残しけり      拓郎

     行く年や向き同じに母子眠る     拓郎

     高々と肩車の子初詣          奈央

     なにもかも胸に納め山眠る      伸子

     悪たれも父の顔なる御慶かな      晋也

     靄生みて靄の中なる冬の川       奈保美

     冬夕日十歩のうちに落ちにけり     奈保美

     自転車を降り初霜をそつと踏     拓郎

     冬日落つ色失し海の果て       富子

     潮騒の育てし蜜柑色深し        はれ子

     金鈴子眼鏡拭く師の国訛り       晋也

     手袋に秘密のように切符入る      左痴

     独居の咳と時計針の音        ひとみ


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。


第18回 栴檀東京句会(平成24年12月22日土曜日)


     地下足袋のつま先躍る秋祭       奈保美

     車椅子同士語らふ冬ぬくし       光枝

     夕日射し蔵の窓辺の吊柿        明子

     人気無きベンチ落葉の彩れり      千恵子

     母上を送られし師やお茶の花      はれ子

     焼芋の売声風の強き夜に        明子

     初めての冬服手足出ぬ赤子       拓郎

     一筋の冬日を選りて人並ぶ       ひとみ

     登校児声掛けてゆく兎小屋       晋也

     ビニル傘ネオンを映師走かな     奈央

     咳嚔その後笑へり赤ん坊        拓郎

     故郷の蜜柑小粒で味の濃し       明子

     竜の玉坂道弾み弾み行        奈央

     夕時雨救急車の音長く引き       奈保美

     手袋を無造作に脱ぐATM         左痴

     靴の落葉家までつけ帰る       ひとみ

     機関車と叫ぶ少年息白し        晋也

     片付かぬものに囲まれ冬うらら     ひとみ

     バラ園といへど一輪冬薔薇       光枝

     竹炭焼く煙むらさき休耕田       明子

     公園の奥へ奥へと冴え進む       拓郎

     老猫のとぼとぼそろり木の葉散る   史


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。


第17回 栴檀東京句会(平成24年11月24日土曜日)


     秋の雲各駅停車を追い越せず      富子

     拾ひゐる間も木の実降りやまず     晋也

     百円の時計正確文化の日        はれ子

     萩の花赤子の鼻をかすめけり      拓郎

     母からの手土産重し萩日和       ひとみ

     顔中に赤紙仁王萩の風         晋也

     行く我と見送る母に秋深し       光枝

     赤い羽根屈みて付けてもらひけり    奈保美

     初紅葉ただ一本を皆で言       富子

     熊ん蜂止り損ね野菊かな       富子

     両替に駄菓子を買ひぬ秋深し      晋也

     切り捨てし葉裏蟷螂孕みり      史

     霧うごく戸隠杉は直立す        悦子

     別れ際二言三言冬に入る        拓郎

     露寒し祖父の厠の固き紙        晋也

     子らの声秋夕暮れと消えにけり     奈保美


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。


第16回 栴檀東京句会(平成24年10月20日土曜日)


       夢のなか若き母をり白芙蓉       光枝

     四段の座布団赤ん坊の昼寝       拓郎

     遠雷の中初めてのベビーカー      拓郎

     擦れ違ふをのこのコロン秋暑し     ひとみ

     秋の夕声掛けそる背中かな      富子

     面のまま眠る幼子秋祭り        晋也

     ブラウスの袖のなかにも秋の風     光枝

     秋の夜すだく虫の音月静か       伸子

     朝露に運動靴のしとど濡       奈保美

     抜きん出で韮の花咲く残暑かな     明子

     運動会歓声校庭一周す         奈央

     隣家よりしだるる萩の紅こぼる     光枝

     萩の風ゆるりと歩む老夫婦       奈保美

     子規の庵厠の窓に昼の月        晋也

     水澄むや黒マニキュアの指反らす    はれ子

     さやけしや青き帽子の鼓笛隊      千恵子

     抱かれたる赤子初秋の空見つむ     拓郎

     十六夜や光る隣家の屋根瓦       明子

     虫の音とともに家人の帰りる     富子

     苦瓜を大きく切りてをとこ      晋也

     見上ぐる顔一瞬照ら大花火      奈央

     切った爪のような三日月出てりぬ   奈央

     嵐去り星の輝く無月かな        明子

     満月を道連れとせる車窓かな      光枝

     満月や赤子はあらぬ方向けり      拓郎

     終電車昨晩より月満ちてをり     ひとみ

     山あひの風に波立つ稲穂かな      奈保美

     忘れ来てピアス無き耳秋の風      富子

     筆談の父夜食かな        晋也     


*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。


第15回 栴檀東京句会(平成24年9月15日土曜日)


     山鳩の声ではじまり終戦日       奈保美

     葛薄萩月見草線路脇          明子

     通過する電車途切れて蟲の声      奈央

          (=環境依存文字により変換不可)          秋草を蹴散らし犬の走り去る      拓郎

     ポニーテール揺るる日焼けの少女かな  光枝 

     項白き少女抱ふる桔梗かな       明子

     庭に咲く秋の七草供へけり       奈保美

     黄金虫回覧板に挟まれて        拓郎

     墓洗ふわが身の如く柔かく       光枝

     八千草を眺独りの露天風呂      ひとみ

     風知草一株ホームの片隅に       明子

     野良猫の蚊を引き連れて通り過ぐ    光枝

            

*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。


第14回 栴檀東京句会(平成24年8月25日土曜日)


     草茂り歩道半分分け合へり       拓郎

     形代の流るる川面澄きとほり      奈保美

     盆参り他生の縁に会釈せり       富子

     汗拭ひベビーカー押すをのこかな    悦子

     烏賊釣火山の端すでに暮れにけり    奈保美

     紙魚棲みてをる『吾輩は猫である』   晋也

     草刈りて草の香しばし残りけり     拓郎

     夏足袋を脱ぎて畳のやはらかし     ひとみ

     萱草の咲きゐて風の高きかな      奈保美

     片蔭の大きな犬の寝息かな       晴子

     腕の毛の逆立つほどの暑さかな     拓郎

     柄杓持ち水戦なり子ら駆ける      奈央

     氷あづき崩しつつ聴くアヴェマリア   晴子

     待ち合はせショートパンツの急ぎ来る  ひとみ

     ヘリコプター出てはまた入る雲の峰   光枝

     わが子見る母の背中や砂日傘      昌男

     汗流る額に頬に胸に背に        彰二

     子規さんとこそ飲みたけれ生ビール   晋也        

*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。


第13回 栴檀東京句会(平成24年7月21日土曜日)


     桜桃忌頬杖つきて選句かな       千恵子

     じんさいのひと皿加へ父の膳     ひとみ

     睡蓮の折り目正しく咲きてをり     奈保美

     風鈴売銀座の風を売りにけり      晋也

     風鈴の川風に音裏返り         奈保美

     蓮池に風生まれては消えにけり     拓郎

     ただいまとピアノにそつと夏帽子    昌男

     人波を掻ひ潜りたり夏の蝶       拓郎

     老猫の耳より動く江戸風鈴       晴子

     山の湯のしじま破りぬ河鹿笛      光枝

     黐の花蝶の離れてこぼれたり      拓郎  

     緑濃き水面揺らぎて蛇わたる      光枝

     出窓より実梅ぎをる少女かな     晋也

         (=環境依存文字により変換不可)

     紫陽花の我この色と咲きをりぬ     悦子

     蚊の来る度に会話の中断し      奈央

    

*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。


第12回 栴檀東京句会(平成24年6月23日土曜日)


特 選  牧の朝仔馬は母の傍で跳ね       富子

     衣更ふ人眩しくて街眩し        光枝

     枇杷の種胸板厚きイタリア人      晋也

     かりゆしのシャツの揃ひぬ更衣     千恵子

     燕来る秩父往還厩あと         奈保美

     夏草や野球少年声らす        拓郎

     草も樹も重たかりけり梅雨兆す     奈保美

     百穴の玄室ふさぐ青芒         明子

     少年の腕青白き更衣          史

     生垣の芽吹く緑のやはらかし      ひとみ

     通学路声とびかひて夏来る       悦子    

     アスパラガス伸びる勢ひや薄暑なる   明子

     誘ひ合ふやうに蛙の鳴き出せり     拓郎   

     百穴をそびらに植田細波す       明子

     昼顔に占領さるる垣根かな       彰二

     若葉風社殿に響く婚の楽        千恵子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。


第11回 栴檀東京句会(平成24年5月19日土曜日)

     春暁や鴉の破るごみ袋         明子

     陽射し増し帽子に日除け被せけ     彰二

     の中ぬくぬくとをる蚕豆や      奈央

     過ぎし日の梅酒ひとくち夢に入る    悦子

     普請場の槌音高し立夏かな       明子

     風に揺るるポニーテール薄暑なる   千恵子

     最初はグー銀杏若葉のじゃんけんぽん  史

     鵯つぐみ姦しき朝夏に入る       明子

     半袖の腕のまぶしき薄暑かな      奈央

     鯉のぼり尾を下げ風を待ちいたり    千恵子

     読みもせぬ本積み上ぐる薄暑かな    明子

     眉月の白く消ゆく春の朝       奈保美

     春の風水面に皺の寄せにけり      奈央

     葉桜の下ハミングの母子かな      千恵子

     雨上り蜜蜂来たる薄暑かな       史

     剥き出しの苺の尻を齧りをり      晋也

     多摩川のたうたうとして芽吹きかな   奈保美

     みどりの日残さるる犬俯けり      千恵子

     マッチばら撒きしごと桜の実     晋也

     スーパーの買い物重し薄暑かな     奈保美

     ベランダの親子Tシャツ薄暑かな     ひとみ

     横柄な野良猫のをり薄暑かな      晋也

     誘ひ合ひ花降る径を教会へ       はれ子

     夕飯の献立まよひねぎの花       豊三

     残雪や人影の無きロープウェイ     拓郎

     鳥の糞アルミに乾き夏来る       晋也

     『栴檀』を胸にそのまま春の夢     はれ子

     澄み渡る阿蘇のジオラマ立夏かな    豊三

     新しき靴春泥を越えゆけり       拓郎

     蒲公英と二羽の雀の並びをり      ひとみ

     街薄暑猫の命日花買ひに        はれ子

     竜巻の来るとは知ら立夏かな     左痴

     髪残るインカミイラの薄暑かな     悦子

     犬に追われ溝に逃げ落つ雨蛙      拓郎

     なぜなぜとしきりに問ひぬ新入生    ひとみ

     砂浴びの雀に貸さむ藤の鉢       はれ子

     山蛭や透明人間如きもの        悦子

     洋服の毛玉取りゐる薄暑かな      拓郎

     お豆腐の白さ眩しき薄暑かな       左痴

     緑陰の参道に笙鳴り響く        彰二

     銅鳥居抱く銀杏の若葉かな       千恵子

     白無垢の人俯いて楠若葉        奈央

     天神の青梅眩し湯島坂         光枝

     樟若葉泡立つごと花芯かな      奈保美

     若葉風新郎新婦の髪揺らす       晋也

         

*下線の処は、森本同人の斧正で直した部分です。

                           


第10回 栴檀東京句会(平成24年4月28日土曜日)


特特選  万愚節老婆足取り軽やかに       千恵子

特 選  陽炎へば流れし母郷現はるる      はれ子

特 選  ひと枝を花瓶に母の花見かな      光枝

特 選  春の闇深きところに富士の山      拓郎

特 選  亀鳴くや長き顔なる老教師       晋也

特 選  芥捨てに出て満月の桜かな       明子

     まだ足の届かぬ椅子や入学児      晋也

     ビニル傘死屍累々春嵐        史

     花の下ひとつ筵に犬をり       光枝

     下水鳴り流るる上の桜かな       拓郎

     枯草の中に見つけし芽吹きかな     彰二

     走り根のアスファルト割り桜咲く    明子

     青空を枝垂桜の花埋め        富子

     すずめすずめ一羽も逃げぬのどかさよ  拓郎

     万愚節笑わぬ一日ありにけり      悦子

     学帽を高らかに投げ卒業す       奈保美

     遥かまで川埋めたる桜かな      千恵子

     吉野山の薄衣まとひをり       光枝

     春嵐四トントラック倒し行く      彰二

     外燈に照らされてをる猫の恋      晋也

     春嵐過ぎ去り空が空色に        奈央

     一葉の草稿柳青みけり         晋也

     吹き渡る風に乗りたる初音かな     昌男

     カーテンに桜の影が散りにけり     奈央

     丁寧に湯呑み洗ひて彼岸かな      奈央

     田の蝌蚪や群がる子らに掬われし    彰二

     秩父連山日差しの溢れ彼岸かな     奈保美

     馬頭観音半円形の花の宴        はれ子

     のどけしや石かと見えて亀の群れ    光枝

     探梅や午から風の出て来たる      奈保美

   

*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第9回 栴檀東京句会(平成24年2月25日土曜日)


     残雪や夕暮るるまで堂修理       明子

     外を行く猫と目の会ふ炬燵かな     光枝

     豆撒きや豆投ぐるたび猫走      奈保美

     寒空を見上ぐ拳を握りしめ       奈央

     マスクより出でてどんぐり眼かな    ひとみ

     黒々と川流れ行く枯野かな       光枝

     ビルの窓拭く人冬青空の中       奈央

     箸紙や父の筆跡懐かしき        千恵子

     冬の雲噴煙の如棚引けり        奈保美

     昨夜食べ鰯の頭挿しにけり      明子

     雪掻きし電話の母の荒き息       悦子

     暁雪掻きの音ひびきり       ひとみ

     節分や眼ほほえむ鬼の面        奈央

     節分や花菜一茎寿司に巻く       明子


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第8回 栴檀東京句会(平成23年12月24日土曜日)


特 選  白き息吐きて鴉の啼きにけり      光枝

特 選  朝晴れて黄の大輪の冬薔薇       左痴

準特選  暖かな日もまだありて林檎パイ     奈央

     お日様の分だけ蒲団膨らめり      奈央

     老いし手をつなぎて歩く冬ぬくし    ひとみ

     木の洞に隠るるように散紅葉      光枝

     一村を見渡す寺や冬うらら       明子

     散紅葉踏み出す歩を止めにけり     悦子

     クラクション遠くに聞こゆ冬の朝    ひとみ

     湯豆腐や友の噂をひとしきり      明子 

     本閉じて小鍋仕立ての湯豆腐     悦子

     鵯啼いていよよ寒さの増しにけり    光枝

     冬枯れの畑に座す船津波跡       明子

     鐘の音錦秋の谿渡りゆく        奈保美

     湯豆腐の湯気のくすぐる掌       左痴

     山もみじ見え隠れする甍かな      光枝

     湯豆腐や曇り眼鏡をはずす父      明子

     銀杏を炒るや鋭く殻の飛び       奈央

     湯豆腐の煮えて何かを呟けり      光枝

     新聞を黙し読んでる掘り炬燵      左痴

     掌の雪蛍動かずにをり         晋也

     浜名湖の彼方冠雪の富士       明子

     踏みしむる銀杏落葉の香り立つ     ひとみ

     湯豆腐の湯気の向こう妻の顔     豊三


*下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第7回栴檀東京句会平成23年10月29日土曜日)


     泥洗甘藷の紫現れり         奈央

     爽やかな風吹きわたる露天の湯     光枝

     秋日和キムチ甕並ぶ寺の庭       明子

     爽やか視線あわせて手話ダンス    昌男

     幼子の笑弾け金木犀        ひとみ

     空に手が届けと伸ばす爽やかや     奈央

     名月やほんのりひかるコップ酒     昌男

     木犀の風提灯揺らしけり       千恵子

     秋深し寄進瓦に名を記す        明子

     木犀の香を纏ひけり車椅子       光枝

     倒れたる稲を両手で抱き起こす     昌男

     牛の尻並んでをりぬ秋麗        晋也

     野分あと目にいっぱいの青き空     千恵子

     秋風にスマートフォン細き指      光枝

     秋天やどこまで空かどこまで海     光枝

     優しさを林檎の如く分けてをり     晋也

     豹柄の服巻きつけし案山子かな     昌男

  *下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。    



第6回栴檀東京句会平成23年8月27日土曜日)


特 選  ケータイに怒鳴る女の夏手套      晋也

     風鈴を扇ぎて音を楽しめり       奈保美

     炎昼や油蝉鵯バイク音         明子

     微動だにせず秋茜路の上        ひとみ

     窓越しの守宮の喉を見てをりぬ     晋也

     百日紅揺れて触れ合ふ紅と白      光枝

     夕立ちやすべての音を打ち消して    奈央

     黄金虫ラジオの上に落ち着きぬ     晋也 

     朝顔の絵団扇母の枕元         光枝

  *下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。    



第5回栴檀東京句会平成23年6月25日土曜日)


特 選  園児らの黄帽子跳ねて風薫る      光枝

特 選  空の色透けるブラウス衣更       奈央

     薫風の吹抜けてゆくビル谷間      光枝    

     五月晴聖堂の鐘鳴りそうな       千恵子

     一束にくくりたる髪夏近し       奈央

     独り居の部屋覗きをる守宮かな     晋也

     山越えの急勾配や風青し        昌男

     靴に染む春の雨生温かく        奈央

     ビル風や単衣の裾の翻る        ひとみ

     青空に千手の欅若葉かな        奈保美

     長良川幾度鮎を吐きし鵜か       左痴

     花楝や言葉少なき友と居て       光枝

     今朝咲きしきうりは雄花ばかりなり   史

     弥生式住居の温し蓮華草        奈保美

     銀色のカフスボタンや夏来る      悦子

     梅雨晴れや音なく伸びる飛行機雲    明子

     開きたる山芍薬に雨止まず       保奈美

     パソコンの画面発光五月闇       奈央

  *下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。    

     


第4回栴檀東京句会平成23年4月23日土曜日) 


特 選  沈丁の香の流れきて本閉じぬ      光枝

特 選  長閑やわが似顔絵に小さき     晋也

     眠る子の乳母車にも落花かな      千恵子    

     手のひらに落花集める少女かな     晋也

     菜の花の茎の色して山の手線      奈央

     一駅を歩き帰らむ夕朧         光枝

     時計みな指す針違ふ万愚節       明子

     落椿蕊に強さの残りけり        晋也    

     停電の闇夜に浮かぶ朧月        豊三

     余震あり春疾風ゴウと吹いてをり    奈央

     山水の音に揺れゐる野梅かな      昌男

     薄紅の梅に降りつむ春の雪       光枝

     足跡をフロントガラスに猫の恋     奈央

     震災の今年匂はぬ沈丁花        明子

  *下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。



第3回栴檀東京句会平成23年2月26日土曜日) 


特 選  音もなく降り積む雪や齢また       明子

特 選  豆腐屋の日脚伸ぶるを言ひにけり     奈保美

特 選  失せし手袋見つからぬまま春立てり    ひとみ

     枝すべて神経の如冬木立つ        悦子

     降る雪にまぎるるしだれなりき     左痴

     聖夜更けよりそ歩む老夫婦       史

     足早のヒールの音や寒の朝        光枝

     どんど炎の先に月ゆらぐ        奈保美

     春立ちて転職の意志固めけり       悦子

     グラビアのブルーの瞳春立てり      晋也

     春立つや挨拶の声軽やかに        奈央

     茜雲麦踏む農夫黙として         美佐子

  *下線の処は、辻主宰の斧正で直した部分です。